ママ・エコノミストの最適化ライフ

子育て・教育、経済や世の中のこと、グローバルなこと、ライフスタイルについて考えていることを書きます。

デフレの日本に生まれた子供が、バラ色の人生を送るために

「日本はモノの値段が安くなって、給料も低くなっているからあまり生活はできないらしいよね?だから、僕が将来日本のサラリーマンになっても、あまり良い生活ができない、って聞いたよ。」

これは、小学校5年生の子供が実際に言っていたことです。

私は今、ヨルダン日本語補習校という、ヨルダンに在住する日本人の子供のための学校で、週に一度勉強を教えています。私のクラスの生徒が、「将来の夢」について問われた時に、口にした言葉です。

さて、皆さんなら、10歳の子供に冒頭のようなことを言われたら、何と答えますか?

以下が、私がその子供に伝えたいことです。(子供に語りかけることを想定して、語り口調になってます)

 

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君が言っているのは、日本のデフレという問題だね。だけど、そんなに悲観的になる必要はない。それどころか、考え方や行動しだいでは、実は日本ではバラ色の人生が待っているんだ。

どうしてかな?

それを考えるには、まず、1)モノの値段の低下、つまり、デフレがもたらすものはなにか、2)日本の今の経済はどんなふうで、将来の経済はどうなるのか、そして、3)君ができることは何か、この三つを知る必要があるよ。

1.まず、デフレとはどんなもので、デフレがもたらすものは何か?

デフレとは、私達が買うモノやサービスの値段が、全体的に下がってゆくことで、日本の経済は長い間デフレから抜け出せずにいるんだよね。

日本では過去20年以上の間、低成長が続いていて、つまり、経済全体がそれ以前のようには成長しにくくなっている。そんな状況のなかで、人々(消費者)がモノをなかなか買わなくなったので、企業も価格を上げにくくなっている。なぜなら、自分の会社だけが価格を上げてしまう、お客さんが離れてしまうからね。その他に、最近オンラインで物が買えることになったこと、外国の工場で作られたから安いものがどんどん入ってくることなども、デフレにつながっているんだ。

そういうふうに、モノの価格がなかなか上げられなくて企業がもうかりにくいということは、裏を返すと、企業が従業員に支払うお給料や賃金も安くなってしまってるということだね。

残念ながらデフレのせいで苦しくなっている人の多くが、若い世代だ。こんな状況では、企業はこれから良い売上が見込めないと思い、若い人をあまり雇わなかったり、雇ったとしても非正規という低賃金で不安定な形で雇おうとするからだ。

なので、デフレのもとで、安い給料体系に甘んじている人が多くなり、働いても暮らしが豊かにならない「ワーキングプア」とか、会社に安月給でこき使われることに甘んじる「社畜」という言葉も生まれてしまった。

2.現在の日本はどんな状況で、これからの日本はどうなるのだろうか。

こんなことを書くと、日本の将来はとても暗いものだと思うかもしれない。だけど、そうやって悲観することは正しくないんだ。

日本は実は非常に豊かな国だ。日本は世界で3番目の経済大国で、あなたが大人になった頃にも、この順位は大きく変わることはないだろう。

日本には、人的資本(ヒューマンキャピタル)といって、有能なたくさんの人がいる。多くの日本人は、学力や高い教育だけでなく、ソフトスキルと言って、置かれた状況でどうすべきかを判断するスキルに長けている。その他、日本の科学やテクノロジーからくる可能性も高く、新しいものを創り出したり、今世紀に人類が直面する様々な問題を解決することだできるだろう。

なので、日本にはまだまだチャンスはあふれている。自分の人生を切り開ける人にとってはバラ色の人生の待ってるんだよ。だけど、残念ながら、人に指示されたことしかできなかったり、さっき言ったような「社畜」みたいになってしまうと、残念ながら厳しい人生になるかもしれない。

3.ではそのために今君ができることは何だろうか。

(i) 自分の頭で考え主体的に生きる習慣をつけること

自分がどう生きるかは、親や教師が決めるものではなく、自分で決めるものだ。君が考えたことに対して親や教師は「あーでもない、こーでもない」と反対するかもしれないけれど、親や教師は多くの場合、古い価値観で生きているので、今のことも将来のこともよく解っていないんだ。

例えば、学校で買っている漢字のドリルがあるよね。あの漢字のドリルのように、ひたすら漢字を書いて憶えるという方法は、日本人が何十年も続けてきたことだ。だけど、ただ根性と時間を使って書いたからといって、君の身につくのだろうか。もしそうではないのなら、君の貴重な時間を使ってどんな風に勉強すれば漢字を使いこなせるようになるのか、どんな風に工夫できるのか、自分で考えてみよう。

この、「勉強方法を自分で工夫する」というのは、実はとても大切なことだ。なぜかというと、君が活躍するころの世の中は、物事が変化するスピードが早いからだ。若いうちに身に着けた知識やスキルはいずれ古くなってしまうので、君が生きている間、常に新しいことを学び続ける必要があるんだ。常にいろんなことを学び続けられるのは、それだけ人生の可能性が広がって楽しいと思うよ。ただし、そうするには、自分に合わない非効率な勉強をしていては、ダメだ。だから、自分で勉強方法を工夫してゆくことだ。

(ii) 次に、自分の好きなことを、リスクを取ってでも追求するということ

何かを成し遂げた人は多くの場合、子供の頃に好きだったことや情熱を抱いていたことを大切にしてきて、それが将来につながっているんだ。今は将来に繋がるとはわからなくても、君が好きなものや得意なものというのは、君にものすごいパワーや可能性を与えてくれるはずだ。なので、たとえ親に反対されても、自分でリスクを取って好きなことに追求するという心構えが必要だよ。

(iii) 言葉の力と考える力を磨くこと

これからの時代、どんなに立派なエンジニアやコンピュータプログラマーの学位やスキルを持っていても、他の人とコミュニケーション取ったり自己ブランディングをするような能力がなければ、どうしても「他の誰かに使われる人」に終わってしまう可能性が高い。

自分の人生を切り開くためには、言葉を使いこなし、自分の思いを他の人に伝える必要がある。なので、言葉の力を侮ってはいけない。

そして、言葉の力を磨くことの素晴らしさは、言葉をつかって、考える力をグンと伸ばせるということだ。

5年生になって国語の教科書の内容が難しくなってきたね。それはなぜかと言うと、10歳くらいから「抽象的思考力」という、目には見えないけれど、頭の中で考えられるようになる練習を始めるからだ。この抽象的思考力こそが、言葉を使って考えるための、とても大切なツールになるんだ。

言葉は何歳になっても学び続けて、常に自分のコミュニケーションの力を磨きつづけよう。他の人に自分のアイディアや自分自身を知ってもらうと、いろんな可能性が拓けて、楽しいと思うよ。
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いかがでしょうか。皆さんなら、10歳の子供から冒頭のようなことを尋ねられたら、なんて答えますか。

それでは!