ママ・エコノミストの最適化ライフ

子育て・教育、経済や世の中のこと、グローバルなこと、ライフスタイルについて考えていることを書きます。

こんな発想も!マインドフルネスと文学

今流行の「マインドフルネス(=自分の考えや感じ方に意識を向け、受け入れること)」と古典文学とが、どんなふうに関係していると思いますか?

 

先日、太宰治の短編小説「女生徒」を読んで、マインドフルネスや日々の子供への読み聞かせについて色々考えさせられました。

 

この「女生徒」という本は、大正から昭和初期頃にかけての戦時下の日本を舞台に、父を亡くし母と暮らす10代の女生徒の日常をとりとめなく書いた、日記のような物語です。

 

まず、冒頭、朝に目を覚ます時の気持ちや主人公が思うことを書きつつ、どんな言葉で表すか考えている段落でこの物語は始まります。出だしから、内面の気持ちや細やかな感情を探り美しい言葉で表す太宰治さんの才能に圧倒されて、純文学を読む高揚感が高まります。

 

後半の、主人公が夕焼けの空を見ながら神々しさを感じ、神の存在に思いを馳せ美しく生きようと心に誓うシーンなど、鋭い感受性に裏付けられた風景描写・心の内面の描写にあふれています。

 

この主人公の女生徒がしていることは、現代風に言うと、「マインドフルな生き方」そのものだと思いました。

 

朝起きたり通学電車に乗ったり学校生活を送ったり料理をしたり、いつもの生活をするなかで、自分の心や他者の心情や周りの情景などを細かく深く観察し、言葉にし、自分は何を感じるのかを問い続ける生き方。

 

本書を読んだ後、私もこの主人公のように自分の心に向き合いマインドフルに生きたい、と思わせてくれます。

 

マインドフルネスの核となる考え方は、「自分の意識を今感じていることや考えていることに向けて、そうした感覚や考えをそのままオープンに受け入れること」(星友啓「全米トップ校が教える自己肯定感の育て方」朝日新書より)。

 

こうした価値ある古典文学を読むことで、心の中をこのように豊かな言葉で表せることを学べてマインドフルネスに役立つということに気付かされます。

 

最近よくある「心理学の最新研究成果に基づくマインドフルネス向上ストラテジー」などもマインドフルネス向上に役に立ちますが、そうしたものとは真逆にある古典文学も忘れてはならない、と強く感じます。

 

本書は短編小説なので、すぐに読めるのも良いです。

 

ところで、この本を読んだ背景は、私がパートタイムでヨルダンに住む小学校高学年の子供に教えていて、「夏休みに8冊本を読む」という宿題を課したので、子供にだけ要求するのではなく「身をもって示そう」と思い、教師として私も夏の間に8冊読もうと決めたことです。

 

私のキンドル端末にある電子書籍一覧を改めて見てみて、おびただしい数になってきた実用書・ノンフィクションに比べて、フィクション・小説・文学があまりにも少なく、特に翻訳でなく日本語で書かれた小説や文学作品がほとんど無いことに気づき、「何か文学を読もう」と思ったという事情もあります。

 

また、8歳の息子が歴史などのノンフィクションや子供図鑑などが大好きなので、近頃では、ついつい読み聞かせの絵本もノンフィクション中心になっていました。子供の心や共感力を育むには「物語・フィクション」を読むことが推奨されていますので、私は何とか「物語」の良さを子供に伝えたいと思っていたのに中々できなかった、という事情もあります。

 

でも、考えてみたら、親である私が物語を読んでもいないのに、子供に「物語・ノンフィクション」の良さを伝えられるはずもないですよね。親としても「身をもって示す」ことを実践してゆきたいと思いました(日々の反省をこめて・・・)。

 

という訳で、久々に「日本の純文学」を堪能するとともに、マインドフルな生き方を学び、子育てでも色々考えさせられました。

 

本書に限らず、日本文学でも外国文学でも、素敵な言葉をちりばめた作品がたくさんあります。

「最近は、実用書やノンフィクションばかりだなあ」と思っているなら、夏の間にフィクションを読んでみませんか?